自社の製品の価格を決定したり、変更する際に「価格戦略(プライシング)」を求められる場合があります。実際の根拠やシミュレーションを行う際に役に立つ手法と解説を行います。
この記事は価格決定に迷っている方向けの記事です。
価格戦略とは
価格戦略は「消費者がサービスや商品を手に入れる際に適切な価格で商品を購入する金額設定のこと」です。
また、価格戦略はプライシング(pricing)とも呼ばれ、顧客の体験価値に大きく影響するため「マーケティング・ミックス」の中で重要な4つの要素「4P」の1つです。
価格戦略の主な手法一覧
マークアップ価格設定
サービスや商品にかかる原価、固定費、人件費などのコストに、利益を乗せた金額で算出する方法。
変動するコストを計算するために多少の会計知識は必要ですが、売上-コスト=利益になるため、広く一般的に使われる手法です。
建設業やシステム開発などの技術によるサービス業で多く見られます。
ターゲットリターン価格設定(損益分岐)
マークアップ方式に近い考え方ですが、数量・販売個数の概念が入り、固定費は期単位で計算します。
一人の顧客を中心としたビジネスではなく、複数の顧客を相手にする場合、固定費を分割する内訳をそれぞれ変動させるわけにはいきません。
そのため、売上が見込まれる数量に対して総コスト・総利益で損益分岐点を決める形になります。
ROIと言われる利益率の指標を作り、達成可能な数量に対してコストを逆算する方式が一般的です。
物販や、製造販売業などの納品物の数量で利益が出るモデルの価格決定方法です。
知覚価値価格設定
顧客の得られる価値を、マーケティング・セールス観点から最大化するための金額設定。
マークアップ、ターゲットリターンでの価格設定を行うと10万の価格の商材を基準に考えると下記のようになります。
+基礎価格、市場価格:10万
+ユーザーの得られる価値:2万
-割引 1万
合計:11万
実際の支払いは、市場価格よりも高くなっていますが、お客様側から見ると12万の価値のものを1万円安く手に入れたと感じることができます。
すぐれた耐久性や、ブランドイメージ、サービス品質、アフターフォローなど。様々な価値をお客様側が納得する2万円の価値を創造し、その上で割引を見せる事が知覚価値価格を設定するという考え方です。
この価格設定を行うのは、白物家電のメーカーや車メーカーなど、比較的日常の中で高額かつ必需の商材を取り扱う企業が多いです。
バリュー価格設定(低価格戦略)
スーパーマーケットのプライベートブランドなどの「低価格で高品質」な商品がメインの価格設定です。
単に低価格で惹きつけるのではなく、品質管理を犠牲にすることなく工程、配送、梱包などのコストをカットし利益を生み出すための価格設定です。
すでに市場が完成されている商材で行える価格設定です。
日常で使われる食品や消耗品メーカーが主に利用する手法です。
現行レート価格設定(競合)
市場や競合に合わせた価格設定を行う手法です。
スマホ通信量などの寡占状態にある市場(コモディティ化した市場を含む)への参入時に使います。
オークション型価格設定
BtoBのビジネスの現場で多く出てくる価格設定です。
英国式、オランダ式、シールド・ビッドの3種があり、それぞれに適した価格設定が存在します。
英国式オークション。吊り上げ方式で、マグロの競りのような決定方法です。骨董品や不動産など、価値の高い商品に対して用いられます。
オランダ式オークション。競り下げ方式で、公開コンペティションを行いより安いものを採用する方式です。
シールド・ビッド・オークション。BtoBの市場のコンペティションに最も近い価格設定の概念。他社の入札がわからないようにして最も価値の高い提案を行った1社が採用される。
参考文献:コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント
適切な価格を設定する上で必要な選択方法
適切な価格設定を行う上で、カスタマーバリューと自社の都合を混同してしまうと大きく間違えてしまいます。
カスタマーバリューは顧客が得られる最終価値
自社のカスタマーバリューがどれぐらいで、変更後の実際の購入コストがいくらなのか。その差はどれほどなのか。
価格戦略を必要とする状況
主に価格戦略を考える際には3つの状況にあります。
- 売上向上
- 新商材の開発
- 売上低下への対策
売上向上の施策
既存の商品がある場合、価格を考える場合4Pのプライス以外の「流通・場所(プレイス)」「製品(プロダクト)」「広告(プロモーション」全体から見直す必要があります。
新商材の開発
新商品や新サービスなど、新規で価格決定を行う際。
既存の市場に参入する場合、市場調査をもとに現行レート価格設定で価格を決定する。
新規で市場を開拓する場合、マークアップ価格設定やターゲットリターン価格設定で決定する。
のようなケースが多いです。
既存の顧客からの価値の調査が行えないため、企業主体で決定する方式を主にとられます。
近年ではクラウドファウンディングなどで、事前調査と資金調達を兼ねた方法でテストを行い価格決定を行う「オークション型価格設定」も一般的になりつつあります。
売上低下への対策
売上低下時には価格を下げる選択肢は「前借り」のような利益だと理解する必要があります。
基礎価格の低下は基本的に品質低下を招き、悪循環の原因となります。
他社との価格競争による低利益化を行うよりも、顧客を満足させる付加価値を低コストでどのように実現するかを商品の販売までのプロセスの中から導き出しましょう。
マネジメンゲームでは、この具体的な手法を学ぶことができます。
具体例をあげますと、ミスタードーナツの100円セールを停止した背景を考えてみましょう。
消費者から見ると、100円セールがある場合、前日にドーナツを買った方は翌日にセールを見かけて損をした気分になってしまいます。
そのため「セールまで待つ」といった心理が働いてしまい、平常時の売り上げが下がってしまう状態にあったため、全体的に見ると利益が下がってしまう状態でした。
価格戦略=お客様の価値を最大化するための価格
価格は消費者行動に大きく結びつくため、変更時には値上げ、値下げに関わらずリスクとチャンスのどちらも存在します。
今回取り上げた内容は、消費者の得られる価値を最大化するための価格設定を行い、より低リスクで戦略を立てて行くための手法です。
自社に合った戦略を選び、お客様とビジネス間でWinwinの関係になれるように選択してください。